クラフトコーラの”材料”を掘る! ~長野県青木村 BOTANICAL CRAFT COLA~

農家のつくるクラフトコーラ

 世の中には様々な種類のクラフトコーラがありますが、その中でも「ご当地クラフトコーラ」というジャンルは安定した人気があります。ご当地グルメという言葉は有名ですが、こちらはいわば「その地域で収穫された食材を使用するクラフトコーラ」という意味になります。例えば青森ならリンゴ、静岡なら緑茶、沖縄ならシークワーサーなどを使用したクラフトコーラが存在します。

 ご当地クラフトコーラはその地域を代表する飲み物として、地元の方々が協力して開発することが多く、販売(開発)者と農家の方は別ということが一般的です。しかし、中には農家さんがクラフトコーラの開発・販売まで行っている例も存在します。

 今回ご紹介するBOTANICAL CRAFT COLAは、長野県小県郡青木村で農業営まれている「株式会社よしとも」さんが販売しており、同農場で生産された「ヤーコン」という野菜が使用されています。このヤーコンは11月が収穫時期ということで、今回私は現地へとお伺いし、ヤーコンの試し掘りに同行させて頂きました。

※BOTANICAL CRAFT COLAそのものは以下の記事で紹介しておりますので、併せてご覧ください!

いざ青木村へ!

青木バスターミナル

 青木バスターミナル

 東京から新幹線と路線バスを乗り継いで約2時間、青木村へと到着しました。上田駅から路線バスへの接続時間もよく、アクセスは当初想定していたものより大分良かったです。上の画像は路線バス(千曲バス青木線)の終点「青木バスターミナル」です。

 余談ですが、かつて上田駅からここまでは鉄道(上田温泉電軌青木線)が通っており、昔はここも鉄道駅でした。鉄道は1938年に廃止され面影は殆ど残っていませんが、現在も路線バスは鉄道時代と似たようなルートを通って営業されています。

 暫く待っていると株式会社よしともの代表、宮入さんが私を出迎えてくれました。

宮入隆道氏

宮入 隆道(みやいり・たかみち)

・株式会社よしとも 代表取締役
・自然小麦の会KOMUGI365 事務局運営
・青木村議会議員

 青木村出身。元々は東京丸の内の大企業でIT系の営業として勤務し、14年前に同村へと戻り農業を開始。ヤーコン・ケール・小麦を栽培する傍ら、マルシェでパンの販売や村議会議員もこなす。

お忙しい中で取材を快くお引き受け頂き、この場をお借り致しまして改めてお礼申し上げます。なお、訪問日は2023年11月11日です。

青木村、車窓

 青木バスターミナルから宮入さんの畑までは自動車で約5分ほど。秋に色づいた山々を仰ぎつつ、道中お話をお伺いしました。

――今年は全国的に残暑が厳しかったですが、畑への影響はありますか?

宮入さん:ヤーコンに関しては土より上の部分は普通に成長しているので、順調に育っているとは思います。ただ、畑ではケールも育てているのですが、そちらは半分とか、三分の一ほどしか育っていないと思います。本当であれば今の時期にわんさか獲れるのですが、苗植えの時期がすごくカンカン照りで、苗を植えても全部枯れてしまうような状態でした。

 確かに影響は出ていますが、いつも全ての作物が上手く育つということはあまりなくて、何かが良かったら何かが良くなかったりとかなんですよ。一つだけ育てていると大変ですけれど、ヤーコン・ケール・小麦を栽培しつつ、かつそれらの加工品を作り、作物が獲れないという状況の中でもなんとかやっていけるような仕組みづくりをしています。

――小麦も栽培されているんですね

宮入さん:うちではパン用の小麦を栽培しています。埼玉県とかでもいっぱい小麦は栽培されているんですが、全部うどん用とかで美味しいパンは焼けないんですよ。秋から冬はパンが沢山売れる時期で、パン屋さんも物凄い小麦を使うので、僕もそれに向けて小麦を作っています。

カンパーニュ

宮入さんが栽培した小麦で焼かれたカンパーニュ

 うちでパンは焼かないんですが、地元のパン屋さんと一緒に自然小麦の会「KOMUGI365」を運営し、パンマルシェやお祭りなどで販売を行っています。そうすると地元で焼かれたパンを地元の小麦農家が売り歩くみたいな、ちょっと面白い感じになるんですね(笑)。

 来週末にも地元でマルシェがあるのですが、富山県からパンを売りに来る方もいらっしゃって、僕たちもびっくりしました(笑)。富山ではオーガニックの小麦は入手し辛いらしく、「マルシェに出るから小麦の取引をさせてください」っていうお話で、僕も「喜んで!」って感じです!

ヤーコン畑へ

ヤーコン畑

 色々とお話を伺っているうちに、ヤーコン畑へ到着しました。周りを山に囲まれた、静かで美しい場所です。ここを訪れる人は、この場所を大変気に入るそう。また、宮入さんの作物はすべて農薬・肥料を使用しない自然栽培で育てられています。

試し掘りにむかう宮入さん

 早速ヤーコンの試し堀りを行います。宮入さん自身はコカ・コーラは飲まれないそうなのですが、ヤーコン収穫用の段ボールはコカ・コーラゼロ(1.5ℓ用)でした(笑)。

ヤーコンの茎

宮入さん:ヤーコンは大きいやつだと、大体3メートルくらいになります。今はこうやって刈り取ってあるんですが、刈り取った葉っぱや茎は発酵させてお茶にして販売しています。

ヤーコン発酵茶

ヤーコン発酵茶。独特の香りがとても香ばしく、体に良い感じがします。

 「株式会社よしとも」の“よしとも”とは、亡くなった父の名前で、父がヤーコンを育て始めました。また、父は高血圧症だったので、その治療のためにヤーコン茶を作りました。現在でも、多くの高血圧症や糖尿病の方がリピート購入して下さっています。

ヤーコンを掘る宮入さん

 宮入さん:この辺はなんか良さそうな芋がついていそうだな。ちょっと抜いてみますね。あんまり芋が大きくなければ、このまま抜けちゃいますし、大きければ少し掘らないといけません。

ヤーコンを掘る宮入さん2

 あ、多分いけちゃいますね。いきますよ、せーの。おいしょ、おいしょ、おいしょ、おいしょ!

掘れたヤーコン

――おおおおおお!凄いですね!結構一株にいっぱい付いてるんですね

 宮入さん:ちょっとびっくりでしょ(笑)。真ん中に大きいのがありますが。これが一株で2本くらいついていると嬉しいですね。ちなみにこの株だと3キロくらいだと思いますが、豊作の年はこの倍くらい一株についていることもあります。今年はまあ平均的な収穫量って感じになると思います。

ヤーコンの株

 大きくて形の良いものは生のお芋として販売をして、小さかったり曲がったりしてるものを加工に回しています。一部はドライチップスにしてそのまま食べるようなお菓子にしているんですが、殆どはシロップにして、「ヤーコンシロップ」として販売しています。

ヤーコンシロップ

ヤーコンシロップは黒蜜に似た香りとコクがあり、パンケーキなどにつけて食べるのも良いそう。

 実はヤーコンというのは収穫直後は甘みが無くて、今食べても美味しくないんですよ。これから1ヶ月ぐらい、丁度12月頭の出荷時期頃まで貯蔵すると、糖度が13度くらいまで上がります。 サラダに入れて生で召し上がることもできますし、りんごの代わりとして利用する方もいらっしゃいます。うちでは一旦ジュース状にして濃縮することによってシロップにしています。

 今お話した通りヤーコンは収穫した際は甘くなく、葉っぱもめちゃくちゃ苦いんです。そのため食害に合わないんですよ。 この辺りは鹿もよく出るんですが、全然食べませんね。あ、せっかくなので空水さんも一本抜いてみますか?

ヤーコンを掘る空水

ヤーコンを掘る空水(筆者)

宮入さん:茎をある程度束ねていただいて。 少し根元を持って、一気に抜く感じではなくてゆっくりですね。

――うんしょ、うんしょ、結構力がいりますね

宮入さん:いけそうですね。

――おお、取れました!手応え以上に芋が多く付いている気がします

宮入さん:取れましたね。 ちょっと揺らしてもらって土を払って下さい。

ヤーコンの種芽

ヤーコンの種芽(画像中央の、少し紫がかったもの)

 「来年のヤーコンはどうやって作るか」ってお話なのですが、ふつう農作物って種を蒔いて芽を出してとかってやるじゃないですか。ヤーコンは“種芽”というものがあって、この根元のボツボツとしたやつですね。

 このボツボツが、一つの株になるんですよ。来年の春までこれをヤーコンと一緒に貯蔵しておいて、来年の春になったらカットして植えます。毎年これの繰り返しのため、新たに種を買ったりとかは無いんですよ

――思った以上に生命力が高いのですね

 そうですね。ヤーコンはアンデス原産なので、そういったところで何千年も生きているだけのことはありますね(笑)。

掘り終えて

宮入さん&空水

宮入さんと空水のツーショット

 今回、宮入さんのヤーコン畑の試し堀りに同行させていただき、大変貴重な経験をさせて頂きました。そもそも農場に入るということ自体が初めてでしたが、自分で掘るという体験を通じて、BOTANICAL CRAFT COLAが自分の中でより身近なものになりました。

 試し掘りの帰り道、「自分で育てたものを自分で売ることが最高に楽しく、何物にも代えられない」と宮入さんは仰いました。宮入さんのこの暖かい想いがクラフトコーラを始め商品へと形を変え、これからも多くの人を笑顔にすることでしょう。

ヤーコンづくし

ヤーコンのフルコース。右下はヤーコンのきんぴら(空水作)。ヤーコンは油で加熱するとより甘みが膨らみます。

【BOTANICAL CRAFT COLAついて】

<HP>
https://e-yoshitomo.com/
<Instagram>
https://www.instagram.com/yoshitomo_farmtotable/

※特に断りが無い限り、画像はすべて筆者が撮影したものです。

BOTANICAL CRAFT COLA、アイキャッチ
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