クラフトコーラを訪ねて ~長野県 カフェ・エピス~

行かないと飲めないコーラ

 現在様々なクラフトコーラが発売されています。通販などで購入できる銘柄がネット社会では目立つ一方で、お店でしか飲めないものも沢山存在します。私の家の近所にもクラフトコーラを提供するお店はいくつかありますが、遠くの知らない町へクラフトコーラを飲みに行くのも楽しいものです。

 「コーラを飲むために新幹線や飛行機を使う」と書いてしまうと、とてもオーバーな感じになってしまいますね。しかし、旅程にクラフトコーラを飲むことを取り入れることで、例えばいつもは絶対に降りない駅に降りてみたり、通常ではあり得ない方角へ歩いたりします。そういった際に、えてして面白い出会があるものだと感じます。

 今回は長野県上田市古安曽にある「カフェ・エピス」さんにお邪魔し、インタビューをさせていただきました。最寄り駅は上田電鉄別所線の下之郷駅です。鉄道好きの私は過去何回か別所線を訪れていますが、下之郷駅で降りたことはありませんでした。クラフトコーラを通して、地域との新たな繋がりが生まれました。

【インタビューを行った方】

竹花 弥 (たけはな・わたる)

長野県上田市出身。IT系の会社を勤務中、幼少の頃より憧れであった料理の道を志して脱サラ。調理師専門学校に通い、調理師免許を取得。2021年4月にカフェ・エピスを開業し、現在に至る。

お忙しい中で取材を快くお引き受けいただき、この場をお借り致しまして改めてお礼申し上げます。

地元と遠方を繋ぐ憩いの場

カフェ・エピス 、外観

カフェ・エピス 外観

――非常に趣のある建物ですね

竹花さん:こちらは元々材木屋さんで、事務所と母屋を兼ねていたようです。カフェ・エピスを開店するにあたって物件を探している際、両親の知り合いの大工さんのもとに、ここを壊して欲しいという依頼がきていることを知りました。

カフェ・エピス 、店内

カフェ・エピス 店内


 大家さんに頼んで建物の中を見せていただいたのですが、とにかく天井部の梁が凄い。とても立派で、壊すのは惜しいと感じました。その後大家さんが「どうせ壊す予定だったのだから好きに使っていいよ」と仰って下さり、こちらをお店として使わせていただいています。

 少しでもタイミングがずれていたら、この建物は壊れてしまっていました。書類上は終戦直後に建てられているようなのですが、まだ元々の持ち主の方がご健在で、その方にお話を伺ったところ、もしかしたら元になった建物は戦前からあるのではないかとのことでした。とても歴史のある建物なんです。

カフェ・エピス 、店内2

店内の一角には竹花さんが撮影した、お客さんの自動車やバイクの写真が並ぶ

――自動車やバイクの写真が多く飾られていますが、そういったお客さんが多いのですか?

竹花さん:そうですね。私自身も車やバイクが好きで、スバルの自動車を所有しています。また、現在は手放してしまいましたが、以前はホンダのバイクのオーナーでもありました。そのような経緯もあり、関係する写真やグッズなどを店内に多く飾っています。

 また、ここから車で1時間くらいのところに「ビーナスライン」と呼ばれる観光道路があり、ツーリングライダーのメッカとなっています。その関係もあって遠方からお越しいただくお客さんは、やはり自動車やバイク関係の方が多いですね。もちろん市内にお住まいの方、ご近所の方がお店を見つけていらっしゃることも多くあります。

クラフトコーラについて

――クラフトコーラ発売までの経緯について教えてください

竹花さん:元々はダイニングバーをやろうと思っていたのですが、調理師専門学校に通っていた時期が丁度コロナ渦の時短営業の時期と重なり、夜の時間帯の営業がが難しく感じました。ではどうやって独立しようかと考えた際、夜間ではなく昼間メインでの営業に目標を切り替えました。

カフェ・エピス 、スパイスカレー

カフェ・エピス主力商品のスパイスカレー。口当たりは甘く、それでいてスパイシー。鶏肉もよく煮込まれていて非常に美味しい。画像のものはハーフサイズ。

 メインになる商材として、カレーを選びました。カレーであれば作り置くことができますし、自分一人で店を切り盛りすることもできると思ったからです。そして色々なカレーを研究・試作している際にスパイスのムック本に掲載されている、クラフトコーラのレシピに出会いました。

 クラフトコーラのレシピはカレーと材料が共通しており、私でも充分製造ができると思いました。また、その頃は長野県内でクラフトコーラを出しているお店は少なかったので、カレーとクラフトコーラの柱二本でやっていこうと決意しました。

カフェ・エピス 、クラフトコーラ

カフェ・エピス クラフトコーラ。14種類の素材を使用し、爽やかでコクもありカレーとの相性も抜群。

――クラフトコーラ開発にあたり拘ったところはありますか?

竹花さん:黒糖・きび砂糖・上白糖の、三種の砂糖を使用している点ですね。黒糖ときび砂糖はコクが良く出ますが味がくどくなってしまうので、上白糖を加えてバランスを整えています。お店ではジンジャーエールも出しているのですが、配分は変えています。コーラの方がよりコクが出るように配合しているつもりです。

 柑橘類はレモンとライムを使用しています。他店だと輪切りにして全部入れることが多いと思いますが、それでは苦みが強くなってしまうと感じ、当店では種を全部取って皮も剥き、本当に香り付け程度に入れています。

カフェ・エピス 、クラフトコーラ2

カフェ・エピス クラフトコーラ (撹拌後)

 また、スパイスについてはシナモン・カルダモン・クローヴ・コリアンダーをベースに、キャラウェイやアニスで甘く爽やかな香りをつけています。フェンネルは単体だとカレーの香りなのですが、スパイスカレーと香りを共通させるために入れています。

 他の材料もスパイスカレーと共通している部分がありますが、実はスパイスカレーにもコーラシロップを使用しており、調味料として使用しています。カレーとコーラをセットで注文すると味の統一感が生まれ相性が良く、美味しく召し上がっていただけると思います。

――クラフトコーラの周囲の感想や評判はいかがですか?

竹花さん:最近ではクラフトコーラの知名度も上がっており、注文される方も増加傾向にありますが、概ね好評をいただいております。ただ、スパイスがダイレクトにくる味わいなので、好き嫌いは正直別れます。コーラというよりは、ドクターペッパーに近いという感想もありました笑

竹花さんから見たコーラの世界

カフェ・エピス、店内2

カフェ・エピス 店内

――コーラが「コーラ」であるために、重要な要素というのは何だと思われますか?

竹花さん:コーラは元々薬用として作られているので、スパイスが重要であると思います。クラフトコーラを作り始めた頃から思っていたことですが、コーラとサイダーの違いは、香りだと思っています。

 香りを出すのはシナモンとかクローブとかのスパイスだと思うので、そういったものが入っていることが重要であると思います。また、コカ・コーラもペプシコーラも、もともとはとしてスタートしているので、飲む漢方薬の役割を果たすものが、コーラではないかと思っています。

――コカ・コーラやペプシコーラの様な、大手企業系のコーラは飲まれますか?

竹花さん:クラフトコーラに携わってからは飲む頻度は下がりましたが、コカ・コーラ派です笑。瓶のデザインが好きですね。関連グッズにも興味があるのですが、コカ・コーラを出していない今のお店だと、飾るところがありませんね笑

カフェ・エピス、店内3

カフェ・エピス 店内

――今のクラフトコーラ業界に関して抱いているイメージをお聞かせください

竹花さん:色々なクラフトコーラメーカーさんを拝見していますが、それぞれ特色のある商品を作っていらっしゃって面白いですね。麹を使用したものや地場の特産品を使用したものなど色々あって、凄いなと思っています。単に自分の会社だけではなく、その地域や業界と一緒に成長していこうという想いも、見習わなくてはいけないと思っています。

 クラフトコーラを作ること自体はハードルは高くないと感じますが、スパイスの選択や配合は無数に存在し、より良いクラフトコーラにたどり着くことは、パズルを解くようなものだと思います。そういった意味でも皆さん真剣に質を追求されている印象を受け、本当に文化として根付かせようと考えているんだなあと思っています。私も一過性のブームとして終わって欲しくないですし、これからも色々と協力していきたいと思っています。

カフェ・エピス 、看板

【カフェ・エピスについて】
<住所>
〒386-1213 長野県上田市古安曽2037

<Twitter>
https://twitter.com/epice_cafe_ueda
<Instagram>
https://www.instagram.com/epice_cafe_ueda/

※特に断りが無い限り、画像はすべて筆者が撮影したものです。

カフェ・エピス 、クラフトコーラ
最新情報をチェックしよう!