潜入!コーラ製造現場 ~クラフトソーダ工房”COLAND”編~

「個人で楽しむ」から一歩進んだ人々

 まだまだ知名度の低いクラフトコーラですが、その楽しみ方は人によって様々です。私のように色々な種類を飲んで味比べをする人。自分の気に入ったクラフトコーラを他の方に紹介する人。自分の理想のクラフトコーラを求めて作る人など、十人十色です。そして中には「作って売ること」に挑戦する方もいらっしゃいます。

 私もコーラを作ったことはありますが、あくまで個人で楽しむだけです。それを通販等で販売するとなれば、経済的にも労力的にも相当な”覚悟“が必要になります。代表的な例を挙げると「清涼飲料水製造業許可」を取得しなければなりません。取得には基準を満たした製造施設・設備を有し、管轄の保健所から営業許可を受ける必要があります。

Motocola、ラベル

MotoColaの表示ラベル

 これは非常にハードルが高いため、多くのクラフトコーラメーカーは清涼飲料水製造業許可を取得している企業に製造を委託しています。その場合、表示ラベルの表記は「販売者」と「製造者」で欄が分かれることになります。現在、多くの種類が販売されているクラフトコーラですが、実は製造者は結構被っていたりします。原材料や製法に拘ることができ、比較的小ロットの製造を受け入れてくれる製造所が国内に少ないことがその理由でしょう。

 しかし、その様な状況下において、ゼロから施設を購入し設備を整え、保健所から営業許可を取得し、クラフトコーラを製造販売している強者(つわもの)が存在するのです。それが今回ご紹介する「クラフトソーダ工房COLAND(コーランド)」さんです。今回私はその工房を取材・見学すべく、三重県は名張市に向かいました。

いざ工房へ!

名張駅駅舎

 とういうわけで、近鉄の名張駅に到着しました。今回は飛行機で羽田空港から関西国際空港へ降り立ち、前々から乗りたかった特急列車を二本乗り継いで、半日がかりでこちらまでやってきました。ちなみに大人しく新幹線を使えば、東京からなら2時間くらい早く着くことができるはずです笑

  COLANDさんへは、ここから車で5分ほど。距離的には歩いてでも行けそうですが結構な坂道を上るため、取材機材などを担いでの徒歩はかなりしんどそうです。

名張川

 訪問時期は11月中旬。肌寒い季節ですがよく晴れており大変清々しく、遠くの山々は少し色づいてきていました。車中から見た景色では特に名張川が美しく、時間があれば降りて散策をしてみたかったです。コロナ禍ということもあり関東から出たのは本当に久しぶりで、名張の町並みを僅かな時間ながら堪能しました。

 名張川を越えるとずっと上り坂で、COLANDさんはそんな高台の閑静な住宅街にありました。

クラフトソーダ工房COLAND、外観

 こちらがクラフトソーダ工房COLANDさんです。ドアだけは両開きで店舗っぽい感じですが、一見すると普通の住宅に見えます。この建物は以前は学習塾だったそうで、そう言われてみるとなるほどなあと思いました。いやしかし、外観からではとても中でクラフトコーラが作られているとは想像できないですね。

早速中に入ると、COLANDの代表の方が出迎えて下さいました。

【今回取材させて頂いた方】

COLAND代表

今 陽祐 (こん・ようすけ)

クラフトソーダ工房COLAND(コーランド)代表。かつて自然食品の会社で働いていた際の知識や経験を活かし、2021年4月よりクラフトコーラの製造・販売を開始。現在は第2弾としてクラフトジンジャーエールも製造している。

お忙しい中で取材を快くお引き受け頂き、この場をお借り致しまして改めてお礼申し上げます。

工房見学

 詳しくお話を伺うのは後ほどにして、早速工房内を見学させていただくことにしました。COLANDさんは一階部分を工房として使われており、二階部分は事務所として使われているそう。外観が一軒家にみえることもあり、てっきり今さんはこちらに住まわれているものだと思っていましたが、ご自宅は別にあるそうです。

 工房の方は大きく分けて、「製造室」と「充填室」に別れています。

=製造室=

COLAND、製造室

 こちらが製造室です。塗床材によって床は緑に塗られ、飲食店の厨房の様な防水工事が施されています。また、設備基準を満たすためには、製造室などの内壁は床面より1メートル以上まで耐水性材料を使用しなければなりませんので、その辺りの内装工事などもしっかりと行われています。

 COLANDさんの作るクラフトコーラ「コーラ・スカッシュ」は、シロップタイプで瓶詰で販売されているため、製造室の設備的にはシンクとコンロの他は、寸胴鍋や各種調理器具等が置いてあるのみで、とてもシンプルです。しかしクラフトコーラを自前で製造するために、物件を選び内装を工事し設備一式を揃えてしまうという今さんの情熱がギュウギュウに詰まっている空間でもあるのです。

MotoCIla_シロップ

 奥の寸胴鍋ではクラフトコーラのシロップが製造中でした。コーラ・スカッシュかな?と思い覗き込むと、色や香りが前に飲んだ時の記憶と随分と違います。今さんに伺うと、「それはMotoColaですよ」というお返事が。

 そう、COLANDさんではクラフトコーラシロップの委託製造も行っているのです。COLANDさんではこれまで、MotoColaや沖縄の美らコーラ等を手掛けており、現在もコーラに限らず様々なシロップの製造依頼が舞い込んでいるといいます。1ロットは上の寸胴鍋で作れる程度で、大体200mlの瓶で100本ほど。自前でもクラフトコーラを作っているためノウハウも充分であり、クラフトコーラの販売を行いたいメーカーからのニーズは相当あるのではないでしょうか。

COLANDで作られたクラフトコーラ

左からコーラ・スカッシュ、MotoCola、美らコーラシリーズ(3種)

ラベル比較

 左側はコーラ・スカッシュ、右側はMotoColaのラベルですが、無論コーラ・スカッシュはCOLANDさんオリジナルのクラフトコーラであるため、販売者と製造者とで欄が分かれていません

コーラスカッシュ、濾す前

 ちなみにコーラ・スカッシュのシロップが入った寸胴鍋もあったため、少し見せてもらいました。コーラ・スカッシュには、きび砂糖、レモン、ライム、柚子、シナモン、クローブ、カルダモン、ナツメグ、オールスパイス、コリアンダー、バニラビーンズ等が原材料として使われており、それらがたっぷりと入っていることが確認できます。

 見た目も去ることながら、蓋を開けた時の新鮮なクラフトコーラの香りが鮮烈です。大鍋で大量に作っているからこそでしょうが、私が家で作る時はこんなに香りが大きく膨らみません。貴重な体験をさせて頂きました。

=充填室=

COLAND、充填室

 製造室の隣にあるのが充填室です。完成したシロップを容器に充填したり、ラベルを貼り付けたり密栓のシールを貼ったりする場所になります。こちらも製造室と同様に床及び内壁の一部が工事により防水仕様になっています。

粘体用分注機

 製造室のメイン機械である株式会社サンシン製の「粘体用分注機 TPK-2000型」です。仕組み的には手前にある白いホースをシロップの入った容器に入れ、1回に充填したい容量をカウンターに入力します。一見簡単そうに思えますが、粘性によっては定量が送られないこともあるようで、送り込む速度を調整する必要がでてくるそうです。そのため、充填後は規定の分が充填されているか計量器を使用して確認を行います。

 そしてラベルを張り、密栓用のシールを貼ったら、いよいよ完成です!

=コーラ・スカッシュ=

コーラ・スカッシュ2

 改めてましてご紹介致します。三重県名張市にある​​「クラフトソーダ工房COLAND(コーランド)」さんの手掛けるクラフトコーラシロップ『コーラ・スカッシュ』です。メーカー自身が新規に「清涼飲料水製造業」の認可を取得し製造している、業界的にも珍しいクラフトコーラです。鋭い目つきのフクロウがトレードマークとしてラベルに描かれています。

 甘味にはミネラルの多い未精製のキビ砂糖を使い、柑橘類は和歌山県産、三重県産のものを使用しています。甘味と柑橘類とスパイス感のバランスがとても良く、全体的に優しい味わいでクセも控えめ。クラフトコーラを飲んだことがない方々への最初の一本としてお勧めできる味わいに仕上がっています。

 私も改めてその場で飲ませていただきましたが、やはり製造工程を見学した後だということと、初めての潜入取材で緊張して喉がカラカラだったということもあって、美味しさもひとしおでした!

今さんへインタビュー

 一通り工房を見学させていただいたた後、今さんへインタビューをさせて頂きました。

COLAND代表、インタビュー

① コーラ・スカッシュ開発までの経緯  

――クラフトコーラを開発しようと思われたきっかけを教えて下さい

 元々自然食品の会社で働いており、世の中にある体に悪いものを無添加や体に優しい物で作りたいと考えていました。そんな時にクラフトコーラという存在を知り、無添加コーラをいろいろな方に飲んでほしいと思い、開発に至りました。

 無添加や自然食品に馴染みのない方々から敷居が高く見られないように、馴染みのあるコーラがそういった食品の入り口になれば良いと考えています。

――コーラ・スカッシュを開発するにあたり、こだわった点を教えてください

 こだわった点は2点あります。1点目は、添加物は使用しないということです。人工的に作られた風味よりも自然な味わいを感じてほしいと考えており、口にする物なので安全な飲み物を選んでほしいと思っています。

 2点目は、スパイスの配合です。何回も試作を行い、口にした時から後味まで、全てを楽しめるような配合にしているつもりです。また、地元の食材を積極的に使うようにしています。

――コーラ・スカッシュを開発するにあたり、ご苦労された点があれば教えてください

 食材の調達に苦労しました。というよりいまだに苦労しています笑

 レモンやライムなどは季節性のものなので、夏は手に入りにくいです。また、自然の食材なので同じ配合で作っても若干味が変わったりするので、品質が安定するまで苦労しました。

――コーラ・スカッシュを飲まれた方々や、地域の方々からの反響はいかがでしたか?

 「美味しい!」と言って飲んでくれたり、知人などに紹介してくれたりする方々がいらっしゃったりして、非常に嬉しいです。また、1人ではなかなかうまくいかないこともあるので、周りや地域の方々のサポートにはとても感謝しています。

COLAND、看板

②  清涼飲料水製造業許可取得までの経緯 

――シロップの製造を委託ではなく、自前の工房で作ろうと思った理由を教えて下さい

 1番の理由は、自分で製造するのが楽しいからです。色々試したり、柔軟に変えられる点も魅力です。また、メインの商品なので人任せにするのではなく、自分で責任を持って製造したかったからです。

 将来的には、クラフトコーラ以外にも様々なシロップやドリンクに挑戦し、小ロットOEM等で他の方々のコーラを作る手助けができればと思っています。あと、単純にクラフトなので自分で作らないと、って思ってしまいました笑

――清涼飲料水製造業の許可を得るのにはどのような設備や手続きが必要ですか?

 製造室、原料置き場、製品置き場の3部屋と、シロップを充填する充填機は必ず必要かと思います。清涼飲料水製造業は3部屋必要なので、ちょうど良い物件を探すのに苦労しました。また、保健所への手続きも必要ですが、こちらは都道府県よっても違うので、最寄りの各保健所に訊いていただくのが良いと思います。

――清涼飲料水製造設備を自前で持って良かったと思うようなエピソードがあれば教えて下さい

 良かった点は、必要な量を必要なだけ作ることができるので、無駄がないということです。また、細かい変更なども柔軟に行うことができます。次第にノウハウも蓄積され、コーラだけではなく色々なシロップにも挑戦できるため、やれることの幅が広がります。

 また、OEMを受けることができるという点も良かったところです。シロップを製造したいけれど設備がない、小ロットで作りたい等のニーズに柔軟に合わせることができます。その様な誰かの役に立てることに非常にやりがいを感じます。また、工房を見学しに来てくれたり、同業者の方をはじめ色々な方との良い出会いも増えました。

コーランド、窓際

③ コーラやノンアルドリンクに関する考え

――コーラが「コーラ」であるために、重要な要素というのは何だと思われますか?

 コーラは元々は薬から始まっているので、飲む人を笑顔や元気にできることが重要だと思います。

――コカ・コーラやペプシコーラの様な、大手企業系のコーラは飲まれますか?

 普段は飲まないですが、大手から発売されたクラフトコーラは飲みました!

――今のクラフトコーラ業界に関して抱いているイメージをお聞かせください

 今はクラフトコーラが注目されているので、世間の関心は高まりつつあるなという印象です。ですが、全く知らないという方も結構おられるので、徐々に広まっていけばいいなと思います。

――コーラ・スカッシュが、人々の持つコーラのイメージをどう変えてくれると嬉しいですか?

 一般的なコーラは、体に良くない飲み物の代表みたいな存在だと思っています。そのため、まずはコーラを無添加で作れること、体に優しいということを知っていただきたいです。また、健康志向の方や小さなお子様でも安心して飲んでいただけるので、コーラに苦手意識のある方も一度手に取っていただきたいと思っています。そしてコーラ・スカッシュをきっかけに、無添加や自然食品に興味を持っていただければ嬉しいです。

 「コーラ」という名前がついていますが、普通のコーラとは全くの別物だと思っています。クラフトコーラがコーラの派生ではなく、新たな飲み物という認識に変わればいいと思います。そのため、炭酸で割るだけではなく、お湯やミルクで割ってみたり、いろんなアレンジも楽しんで欲しいと思います。

――最後に、クラフトコーラのシロップを製造したいと思っている方々へ一言お願いします!

 小ロットで作れたり金額を抑えたり、使用する食材なども柔軟に対応することが可能ですので、まずはご相談ください。OEM募集してます!

取材後記

コーランド、ツーショット

ツーショットで撮らせて頂きました笑。私(右)が持っているのは、COLANDさんが新たに手掛けたジンジャーシロップです。

 今回はクラフトソーダ工房COLANDさんにお邪魔させて頂きました。私としても初めての製造現場へ立ち入っての取材でした。大変緊張しましたが得られるものが非常に多く、とても勉強になりました。

 取材をして感じたことは、今さんのクラフトコーラや飲料製造に対する真摯さ、真剣さは相当なものだということです。ゼロから清涼飲料水製造業許可を取得し、今後はこの事業で地域に根を張り、プロとして生きていくことを決断したわけですから、それはとてつもなく凄いことです。

 コーラを趣味として飲み始めてから約10年。私のコーラに対する向き合い方というものは、率直に言ってしまえば気楽なものです。他の方々が作ったコーラに関して、感想を言うだけですから。だからこそ、「作る側」になられた方々には、いつも頭が下がる想いです。

 私には応援するくらいしかできませんが、今後も作り手の方々に取材をさせていただき、飲料の世界の面白さを一人でも多くの方に伝えることを使命としていきたいと思います。

【クラフトソーダ工房COLAND リンク】

HP : https://coland-soda.com/
Twitter : https://twitter.com/colandsoda
Instagram : https://www.instagram.com/coland_soda/

〒518-0746
三重県名張市梅が丘北1番町330
Tel. 0595-54-6838
Fax.0595-54-6839

※特に断りが無い限り、画像はすべて筆者が撮影したものです。

コーランド、ツーショット
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