霧島酒造からクラフトコーラ発売
現在、新しいクラフトコーラが続々と登場していますが、甘味に「米麹」を使用している銘柄も増えてきました。Cola Fanでも過去何度か紹介していますが、販売元は主に酒蔵で、米と水と発酵を熟知したノウハウを生かした、日本らしいクラフトコーラ作りをされています。
そして先月、霧島酒造株式会社さんが「KIRISHIMA CRAFT COLA(霧島クラフトコーラ)」を発売。霧島酒造さんといえば本格芋焼酎「黒霧島」が有名であり、クラフトビールも発売されていますが、遂にコーラも登場です。一体、どのようなものなのでしょうか?
KIRISHIMA CRAFT COLA (2022年7月15日発売)
改めまして『KIRISHIMA CRAFT COLA』は、霧島酒造株式会社が焼酎造りで培った発酵技術を活かし、オリジナルの黒麹から作られた甘酒を甘味のベースとしているクラフトコーラです。まず驚くべきは使用されている柑橘類の数です。「オレンジ」「レモン」の他に、宮崎県産の「日向夏」「金柑」「へべす」「マイヤーレモン」が加わり、なんと6種類も入っています。生姜や塩も同県産のものが使用されており、地域の素材を徹底的に使おうという拘りが感じられます。
口に入れた際の瑞々しい柑橘類の酸味やピール感が非常に新鮮な印象を与え、その後は黒麹甘酒をベースにした優しい甘さと、コリアンダーやナツメグ等の爽やかなスパイス感が、軽やかに口の中に広がります。ラベルも明るい配色をしており、全体的に非常に爽やかな印象です。
甘味として麹甘酒を使用する場合、通常の砂糖に比べてそれ自体の風味が強いため、クラフトコーラ全体の味を大きく支配してしまいがちです。その点『KIRISHIMA CRAFT COLA』は、甘酒感を上手く残しながらも柑橘感やスパイス感のバランスがとても良いと感じました。
KIRISHIMA CRAFT COLAと温めた黒霧島を1:3程度で割る(お好みでお湯を足してください)
私のお勧めの飲み方は、KIRISHIMA CRAFT COLAと温めた黒霧島で割ったホットコーラです。クラフトコーラシロップはお酒で割っても美味しいですが、焼酎や日本酒などの日本のお酒にも良く合います。また、温めることによってクラフトコーラの素材の味わいがよりハッキリとし、冷やして飲む時とは違った顔を見せます。暑い夏は冷房や冷たいものを摂りすぎて体を冷やす機会も多くなりがちですが、そんな時にぜひ飲んでみてください。
さて、先述の通りKIRISHIMA CRAFT COLAは麹甘酒を使っている割にはスッキリと飲みやすい味わいに仕上がっています。その秘密は一体何なのでしょうか?霧島酒造さんとその辺りについてお話していたら「それでは実際に宮崎に来て確かめて下さい!」と衝撃的な返答を貰ったので、実際に宮崎へお伺いし、取材をさせて頂きました。
いざ宮崎へ!
ということで、宮崎ブーゲンビリア空港へとやってきました!実は私の母方の実家がかつて鹿児島にあり、親戚が宮崎に住んでいたこともあって、宮崎には子供の頃よく来ていたのですが、空路で来るのは初めてですね。ちなみに”ブーゲンビリア”とは熱帯に咲く花とのことで、恐らく上記画像に写っているピンクの花がそうです。南国宮崎のイメージにピッタリですね!
到着ロビーについてすぐ「空水さん!」とのお声が。今回宮崎へご招待下さった、霧島酒造企画室の章性民(ザンスンミン)さんです。章さんの案内で空港出口まで足を運ぶと、他にも霧島酒造の方々がいらっしゃり、総勢4名で私を出迎えて下さいました。本日はお世話になります!
早速霧島酒造さんの自動車へと乗り込み、宮崎空港から青島方面へ国道を南下していきます。今回は霧島酒造さんの工場見学の他にも宮崎を色々と案内して下さるそうで、とても楽しみです。天気は快晴で車窓にはフェニックスの並木が流れ、宮崎に来たことを実感し非常に清々しい気分となりました。
宮崎空港を出て20分程で堀切峠へとやってきました。青い海と空にフェニックスの葉が揺れ、日南海岸ひいては宮崎を象徴する非常に美しい景色です。ちなみに当記事のアイキャッチ画像も、こちらで撮影をしたものを使用しています。
また、眼下には「鬼の洗濯板」と呼ばれる、特徴的なギザギザの海岸が広がります。これは「砂岩泥岩互層」と呼ばれ、砂岩と泥岩が交互に堆積されたことにより、ギザギザの地層になるのだそうです。
レモン農家さんへ
堀切峠を後に、左手に日南海岸を眺めながら更に南下し、日南市を目指します。そして次は、実際にKIRISHIMA CRAFT COLAの原料にもなっているマイヤーレモンなどを栽培されているレモン園さんにお邪魔させて頂きました。
レモン農園とマイヤーレモンの木
こちらがマイヤーレモンの他、カリスティーニという品種のレモンが栽培されているレモン園となります。そしてこのレモン園の生産農家さんに、色々とお話を伺いました。
基本的にレモンというのは寒さに弱く、マイナス3度以下になると木が弱ってしまうそう。この辺りは最低気温がマイナス3度で、ギリギリ生産ができるとのこと。
成長中のマイヤーレモン
木の高さはまだまだ大きくなるようで、収穫は11月頃。今はまだ小さく緑色ですが、最終的には皆さんがご存じのレモンの大きさとなり、色もオレンジがかった黄色になります。
日南市ではレモンの栽培面積が増加傾向にあるとのこと。その理由としては他の柑橘類と比較して栽培がしやすく、サルなどの野生動物からの食害も少なく虫などもあまりつかないのだそう。ただ、「かいよう病」と呼ばれる細菌病に弱く、その予防は徹底的に行わなければなりません。
マイヤーレモンの断面
農園にお邪魔させていただいたのは7月の末ですが、この時期だとまだ絞っても果汁は出ません。農家さんのご厚意で断面を見せていただきましたが、確かに砂じょうの部分はしっとりとはしていますが、果汁が出そうな雰囲気はありませんでした。ちなみに少し齧らせていただきました。一般的なレモンにあるような強い酸味はありませんが、香りはとても良く、非常に爽やかでした!
コーラとレモンが相性が良いのは皆さんもご存じだと思いますが、強い酸味や苦味が少しクセを与えてしまうこともあります。しかしマイヤーレモンであれば柔らかい酸味で苦味も少なく、全体的にまろやかに柑橘の香りを加えられるのでコーラとの相性は抜群です。KIRISHIMA CRAFT COLAにもマイヤーレモンが入っていますが、ベストチョイスであると思います。
霧島酒造へ
色々良くしていただいたレモン農家さんを後に、霧島酒造の本社や製造場のある都城市へと向かいます。日南市からは自動車で約1時間ほどでした。
霧島酒造さんの製造場に到着です!霧島酒造には5つの工場があり、1日あたり一升瓶(アルコール分25%)換算で約20万本分の生産能力があります。また、「焼酎の里 霧島ファクトリーガーデン」と呼ばれる観光施設があり、レストランや売店やミュージアムなど、場内の色々な施設が利用できます。また、予約をすれば工場見学も可能です。
早速、場内にある撮影スポット「黒霧島」の巨大モニュメントで、霧島酒造さんの皆様と記念撮影しました。幅と奥行きは各約0.7メートルで、1.8リットル入りパック商品の約512倍の大きさなのだそう。ちなみに奥に見える建物は、この後工場見学に伺う「志比田第二増設工場」です。
改めまして、今回の取材にご協力下さった皆様をご紹介致します。右から、霧島酒造企画室の章性民さん、大沼岳さん、そしてKIRISHIMA CRAFT COLAの開発担当者である同企画室の堀内美咲さん、そして研究開発部の瀬戸口翔さんです。この度は本当に有難うございました!
工場見学へ
さあ、いよいよ工場見学です!実際に黒霧島などの芋焼酎がどうやって造られるのか、工場内の写真を織り交ぜながら製造工程を説明していきます。
※工場見学施設内は撮影不可な箇所も御座いますが、今回は特別に許可をいただいて撮影・掲載を行っております。
まず、芋焼酎造りに必要な原料は米、サツマイモ、水です。霧島酒造さんでは、サツマイモは主に「黄金千貫(こがねせんがん)」という品種を、水は「霧島裂罅水(きりしまれっかすい)」と呼ばれる地下水を使用しています。
「米蒸し」に使用される機械群。右奥の蓋が少し開いているものが「連続米蒸し機」
はじめは「米蒸し」です。ここでは運び込まれたお米の洗浄・浸漬・水切りを行った後、連続米蒸し機に入れ、外側が硬くて内側がふっくらとしている「外硬内軟」の状態に炊き上げます。蒸米は冷やされた後に麹菌がまぶされ、自動製麹(セイキク)機に入れられます。
「一次仕込み」に使用されるタンク群
次に「一次仕込み」が行われます。「酒母(しゅぼ)」と呼ばれる一次もろみを作るための工程です。先程できた麹と霧島裂罅水を混ぜ、酵母菌を加えます。麹菌の酵素によってお米のデンプンが糖に分解され、その糖を酵母菌が食べてアルコールと二酸化炭素が発生します。約5日で一次もろみは完成し、アルコール度数は14%程になります。
連続芋蒸し機
続いて「芋蒸し」です。霧島酒造さんで1日に使われるサツマイモの量は約400tほど。これらは連続芋蒸し機で芯温が91度になるよう1時間かけて蒸され冷却されます。
「二次仕込み」で使用されるタンク群
「二次仕込み」では、一次もろみにサツマイモと霧島裂罅水を加え、二次もろみを作ります。ここでもサツマイモのデンプンの糖化とアルコール発酵が並行して起こり、8日間ほど経過すると芋の香りのする二次もろみが完成します。
蒸留機群
蒸留工程では二次もろみを沸騰させ、その蒸気を冷却すると焼酎の出来上がりです。その後はタンクに移されて貯蔵・熟成され出荷を待ちます。
焼酎粕と芋くずのリサイクルプラント
また、霧島酒造さんでは大量のお米やサツマイモを使用しますが、焼酎造りの過程で出た焼酎粕や芋くずは破砕され、リサイクルプラントに送られます。そこでメタン発酵され、バイオガスとなって霧島酒造の工場で使うボイラーの燃料や、発電機によって電力に変換されています。
いかがでしたでしょうか?私は焼酎造りの知識がこれまで全く無かったので、工場見学の前は専門の職人の方々が大きな木樽を前に作業をしているような、そんなイメージでした。しかし霧島酒造さんでは発酵の工程を含め多くの過程がオートメーション化され、少ない人数で大量に安定供給ができるような取り組みがなされているのだと感じました。
KIRISHIMA CRAFT COLAは、ベースとなっている黒麹甘酒に対し、霧島酒造こだわりの発酵技術や発酵と向き合ってきた歴史が凝縮されることによって、その美味しさが造られているのですね!大変勉強になりました!
工場見学の後に
さてさて、こういった工場見学では最後の試飲が何よりの楽しみですよね!ここでは焼酎は勿論のこと、先程ご紹介した霧島裂罅水も飲むことが可能です。
黒霧島をはじめ、霧島酒造さんが発売している様々な焼酎の試飲が可能です。私は殆ど試飲させて頂きましたが、特に「玉茜(たまあかね)」という品種のサツマイモを使用している「茜霧島」が、非常に香りが華やかで美味しく感じました。
今回特別に、瀬戸口さんがシャーレに入った様々な米麹を見せて下さいました。左上が黄麹、右上が白麹、右下が黒麹、そして左下がクラフトコーラ用の黒麹です。黄麹は一般的に甘酒や味噌などに使われ、白麹や黒麹は焼酎を作る際に使われるそう。ちなみに黒麹を使うのが黒霧島で、白麹を使うのが白霧島です。
「どうぞ食べてみてください」という瀬戸口さんの勧めで、それぞれを食べてみました。米麹をそのまま食べるのは初めてでしたが、しっとりとしていて不思議な食感です。黄麹は優しい甘さを適度に感じ食べやすく、スナック感覚で食べられる美味しさです。白麹と黒麹は味に大差は無いと感じましたがクエン酸の酸味が強く甘味が薄れ、黄麹に比べると随分食べづらいように感じました。
「それでは次に、こちらをどうぞ」と瀬戸口さんが取り出したのは、先ほどの黄麹と黒麹を甘酒にしたものでした。早速飲んでみると、黄麹甘酒は甘さも風味も強く、一般的に皆さんが想像する甘酒です。一方で黒麹甘酒の方は、先程の米麹の状態で感じた食べづらさは無く、麹の癖が少なく酸味があって爽やかな印象です。
瀬戸口さん「一般的に皆さんが思う甘酒の味わいというのは黄麹から作られるものです。しかし風味や甘さがやや強くなり、コーラ全体の味のバランスを取るのが難しくなります。一方で黒麹甘酒は甘酒にしてはスッキリとしていますが液色は黒っぽくなってしまいます。しかしクラフトコーラではその点は気にならず、黒麹の価値を最大限に引き出すことが可能なのです。」
なるほど、この記事の冒頭で感じた、麹甘酒を使用している割にはスッキリして飲みやすい理由はここにあったんですね。説明を聞いている時、終始目から鱗状態でした!
最後に、霧島ファクトリーガーデン内にあるショップ「霧の蔵ブルワリー」に行きました。ここでは黒霧島をはじめ、色々な宮崎のお土産を買うことができます。奥にはレストランも併設され、KIRISHIMA CRAFT COLAも飲めるようになっています。
勿論KIRISHIMA CRAFT COLAも置いてありました。お伺いしたのは発売直後でしたが、評判も良いようです!クラフトコーラの良さがもっと多くの方々に伝わると良いですね!
私が買った中で特に美味しかったのは、霧島酒造さんと亀田製菓さんがコラボした『霧島に合う 亀田の柿の種』です。3種類発売されていて、黒霧島が「味噌モツ鍋風味」、白霧島が「鶏からあげ風味」、赤霧島が「チキン南蛮風味」です。
お土産を沢山買い込み、帰路へとつきました!本当に何から何まで楽しかったです!
【霧島酒造 リンク】
<KIRISHIMA CRAFT COLA 通販ページ>
https://www.kirishima-product.com/products/list.php?type=set&category_id=10033
<Twitter>
https://twitter.com/kirishimashuzo
今回は霧島酒造さんやレモン農家さん、地域の農業協同組合の方々のご協力の下で取材をさせていただきました。この場をお借りしまして、改めて御礼申し上げます。
※特に断りが無い限り、画像はすべて筆者が撮影したものです。